ハコベルに「トラック簿」が加わり物流DXのソリューションが拡充。目指すは持続可能な物流の構築
「物流の “次” を発明する」とのミッションを掲げ、持続可能な物流を構築するハコベル株式会社(以下、ハコベル)。ハコベルは2024年11月1日(金)より株式会社モノフルが運営するトラック予約/受付サービス「トラック簿」事業を継承し、現在提供中の物流DXシステム「配車管理」・「配車計画」・「動態管理」に加えて、「トラック簿」をラインナップに追加した。今回は物流DXで解決する領域をさらに拡充したハコベルに、これから生み出すイノベーションや将来について深堀する。
写真左から
・西本 慎太郎
京都大学工学部卒、同大学院工学系研究科修了。野村證券でM&Aアドバイザリー業務に就いた後、ドリームインキュベータ、ベイン・アンド・カンパニーでは戦略コンサルティング業務に従事。国内大手企業を中心として、全社戦略・事業戦略の策定・実行支援、組織・人事制度の改革、NPS改善等、様々なプロジェクトをリード。
2019年、エンバーポイントのCSO・CFOに就任し、経営戦略・財務経理・人事を管掌。2024年4月、ハコベル株式会社にコーポ―レート本部長として入社。11月からは 執行役員に就任。
・平野 将樹
新卒で広告代理店に入社し、4年間マーケティングに従事。プロモーションやマーケティングの現場で消費実態の把握に努めた後、2012年にソフトバンクに転身。商品企画統括 サービス企画部に配属され、スマートフォンを活用した子育て支援サービスを開発・担当した。ユーザーライフスタイルに沿ったサービスの開発に努めた後、既存商材の拡販営業に異動。全国の企業や行政・自治体へ足を運び、通信キャリアの次なるプラットフォーム化事業を目指す活動のなかで、地方の課題を解決すべくさまざまな企業・団体と協業を実施。2020年、日本GLPグループのモノフルへ入社。
トラック予約/受付サービス「トラック簿」のオーナー責任者に就任。新規事業の立ち上げの後、経営全般に携わる。2024年11月、ハコベルに「トラック簿」を事業承継と同時にハコベル入社、トラック簿事業部 事業部長に就任。
西本様のこれまでのご経歴、ハコベルへ参画したタイミングについて教えてください。
西本:私は投資銀行・コンサルを経てから、事業会社でキャリアを積んできました。現在はハコベルにてバックオフィスを管掌する執行役員を務めています。
前職のデジタルマーケティング会社では、CXOとして事業のバリューアップに注力し、特に利益率の向上に取り組みました。その企業は比較的歴史の長い会社で、社会課題解決型事業で設立からまだ間もないスタートアップであるハコベルとは異なる文化や雰囲気がありました。
スタートアップに転職する時に葛藤はありましたか?
西本:もちろん多少なりとも迷いはありました。ハコベルはまだ会社規模が小さく、認知度の拡大が必要である時期だったので、将来の見通しという点では不安が残る環境ではありました。
しかし、これまで所属していた企業と比べて、スタートアップならではのスピード感や急激な成長曲線を目の当たりにするうちに、その不安は次第に薄れていきました。むしろ、そうしたダイナミズムに身を置ける環境にワクワクしています。
また、全社的にvalueである “オーナーシップ” を重んじ、各領域でプロフェッショナルな人材が活躍する風土においては、これまで以上の重責を感じていますが、その分、自分が会社の成長に直接的に貢献できる実感が得られる点が非常に魅力的です。大企業や従来のベンチャー企業とは異なる、独特の感覚を味わいながらアグレッシブに取り組めていると思います。
平野様のこれまでのご経歴ついて教えてください。
平野:私のキャリアは広告代理店でマーケティングに従事したあと、その後ソフトバンクに転職し、B2Cの子育て世代向けのサポート商材の開発に携わりました。その後は対企業向け、行政向けへと既存商材の拡販を担うエンタープライズ向け営業へと移行、自治体や各省庁を回って、課題感をお聞きするべく全国を奔走しました。当時、通信キャリアはプラットフォームを目指していたので、いろいろなパートナーと商材を生み出していく活動をしていました。例として道路の修繕、河川の水位状態把握といった公共インフラに貢献するIoT業務に携わりました。
その後、日本GLPに入社、グループ会社であるモノフル社にて「トラック簿」のプロダクトオーナーとして、プロダクト戦略の立案と実行を担当していました。また、「トラック簿」に留まらず、モノフルが展開する次世代物流を構築するためのプロダクトの統括も行い、最終的には経営全般に携わるようになりました。
物流業界に転職した理由を教えてください。
平野:以前ToGのビジネスに取り組んでいた際、日本社会が抱える物流の大きな課題を目の当たりにしたことです。物流は社会インフラの根幹をなす重要な分野であり、課題解決に取り組むことで社会に貢献したいと考えました。
また、私は会社を選ぶ際に「共に働いてワクワクするか」ということを判断の基準においています。当時、日本GLP社に尊敬している方がおられ、「面白い会社があるよ」と紹介されたのがモノフルだったわけです。このたびの事業承継が決まった際も、ハコベルの社長である狭間と会い、この人とならさらにサービスを進化・成長させられると強く感じたことが大きな決め手となっています。
実際に2024年11月に事業承継を完了し、ハコベル社に転籍した現在においても、トラック簿事業部のメンバーへのケアや事業の成長戦略について何度も議論を重ねています。その中で、メンバーと共に高いモチベーションで事業を推進できる環境を築けていると実感しています。
11/1付けで正式に事業承継となるモノフルによる「トラック簿」について、現在の展開に至る背景や、物流業界への影響についてお聞かせください。
西本:ハコベルでは以前より、トラック予約受付システム、いわゆるバース管理プロダクトを自社ラインナップに加えたいと考えていました。自前開発にこだわるものではないため、サービス品質に優れて解約がほぼ無く、直近の成長率がナンバーワンである「トラック簿」はとても魅力的でした。今回、ご縁があり事業承継を受ける運びとなったことで、改めて当社にとって非常に重要なプロダクトであると実感しています。
「トラック簿」が持つ最大の強みは、その優れたUI/UXで、ドライバーの方々にとって非常に使いやすく設計されていることです。導入のしやすさも魅力で、当社の考える顧客へのソリューション提供の在り方と合致していました。さらに、「トラック簿」は社会的課題として注目が集まっている「物流2024問題」に対して政府が掲げる対応策方針の、「荷待ち・荷役時間削減」を解決する可能性を持ったプロダクトです。当社が提供している他のプロダクトとシームレスに連携することで、荷主企業様やドライバー様・運送事業者様まで、物流業務全体を支援できる包括的なサービスを構築することができます。この統合によって、業界全体の効率化と持続可能性の向上に貢献できると考えています。
平野:「トラック簿」は、「バース管理」(トラックが荷下ろしの際に到着するバースでの荷待ち荷役時間等を管理する業務)に特化したプロダクトとして、現在飛躍的な成長を遂げているサービスです。輸送領域や配車計画および配車管理の領域は網羅していないこともあり、今回の事業承継により、双方が担ってきた領域の隔たりを無くすことができ、より顧客の課題解決に対応することが可能になると考えています。これにより、物流業務全体を効率的に支援できる体制が整います。
西本: 今回の統合を通じて、当社の既存プロダクトと組み合わせることで、より多くの物流現場にサービスを浸透させ、業界全体の効率化と持続可能な成長を後押しできると確信しています。
なぜハコベルはここまで成長しているのでしょうか。
西本:ハコベルが成長している理由は、社会課題の解決に直結するサービスを提供している点にあるのではないでしょうか。当社のプロダクトは売上目標の達成を目指すアプローチで生まれたものではなく、社会や業界ニーズにあったサービスを考え、試し続ける中で出来上がったものです。つまり、ハコベルが成長していることは、その分だけ業界課題が解消されていることと同じで、それは我々の存在意義・モチベーションになっています。
平野さまがハコベルに参画する前までの話について教えてください。
平野:ハコベル社から「トラック簿」を成長させたい、携わるメンバーを幸せにしたい、という思いが強く伝わってきたのです。突然のことで当初動揺も見られたメンバーたちも、狭間に会って直接話を聞くことで安心し、全員で「事業成長が最大の目的である」ことを共有することができました。実際に参加した後も、その印象は全く変わらず、私を含め従業員全員が一体感を持ちながら事業開発に取り組めていると実感しています。
西本: 私の第一印象としても、「トラック簿」の方々はハコベルの社風に非常に合うだろうと感じていました。物流の持続的発展を目指すという共通の基盤があることで、互いにスムーズに協力し合いながら取り組んでいくイメージが自然に湧いたことを覚えています。
今後の展開について教えてください。
平野:物流業界は非常に多忙ですし、さまざまな側面があります。簡単に業務量が減ることはないうえに、大変過酷です。そうした膨大な作業や物量を考えるとまだまだ多忙な状況が変わる兆しは見えることはなく、人手不足も相まって皆さん休む暇もなく働いているという状況です。社会課題として認識され徐々に関心も集まってきていますが、解決にはまだまだ遠い道のりです。また、物流業界におけるデータの集約・分析・活用が始まったばかりですので、ドライバー様が快適に業務を行えるようになるにはまだ時間がかかるでしょう。
「トラック簿」が意識しているのは、さまざまなサービスをどれだけシームレスにつなげられるか、かつドライバー様にとって使いやすいかということ。そこからデータ抽出ができ、分析できるところまでを視野に開発を進めています。倉庫に目を向ければ、トラックの待機時間がありますね。その待機時間を減らすことができると、ドライバー様はまたもうひとつ仕事をすることができるようになり、賃金は上昇し、生活者にとっても荷物が早く届く可能性が高まるわけです。
一見すると領域が凝縮されたものに見えるバース管理ですが、物流の循環、ひいては経済の循環において非常に重要な役割を果たしています。「トラック簿」が完成することはありません。効率化と可能性の領域を拡大しながら、さらなる進化を遂げていきます。
成長しつつある自動運転についての考えをお聞かせください。
平野:自動運転技術は確実に進歩していますが、最後の荷物の受け渡しの部分など、すべての業務を自動化するにはまだ時間がかかると考えています。特に「ラストワンマイル」の部分では、人間の対応が必要な場合が多いです。
西本:平野と同じ意見で、物流には自動化が難しい部分があると共に、今後は従来よりも複雑な運送や情報処理が求められるようになります。これにより、さらに多くのデータが必要とされ、私たちの持つデータの需要が高まると予測しています。したがって、これからの自動運転技術の進展は新たなビジネスチャンスを生み出す可能性が高いと私は考えています。
ハコベルに求めている人物を教えてください。
平野:変化を楽しめる人。もっと言うならば、楽しめることでモチベーションが上がる人は、フィットするはずです。そもそも、私たちが向き合っている物流業界自体が激変の真っ只中にあります。物流業界は法改正をはじめ、今後もさらにダイナミックな構造変化を遂げていきますので、その変化を楽しみながら私たち自身も変化していくことが必要となっていきます。もうひとつ、「泥臭いことができる」という点も重要な要素と言えるでしょう。
ドライバーの皆さまが汗水たらして働いてくださっている。荷物が手元に届くまで、誰かが仕事をしてくれている。だからこそ自分たちもそこで汗をかける人。そういった方とぜひご一緒したいですね。
今回私自身もハコベルにジョインしたことを契機に、気持ちも新たに「働く人にとって魅力的な職場にしていこう」と思っています。