“未来を創る、プラスチックリサイクルの革新者・esa”がwithプラを通じて世界の環境問題に立ち向かう。
プラスチックのリサイクルを中心とした環境事業を展開する「株式会社esa(読み:イーサ、意味:Environmental Solutions Architect の頭文字)」は、シリーズBエクステンションラウンドにおいて総額1.2億円の資金調達を完了。累計調達額は9.3億円。esaは従来廃棄されてきたプラスチックを独自の技術で加工し再利用化を進めている。リード投資家は、みやこキャピタル株式会社(国立大学法人京都大学の連携ファンド運営事業者)。革新的なリサイクル技術を活用し、日本のみならず海外への展開を目指す。
事業概要について
事業内容についてお聞かせください。
esaは2022年に立ち上げた、マテリアルリサイクルのスタートアップです。創業メンバーが4人おり、私の他にCOOの枝吉、CTOの周兄弟の計4名で創業しました。周兄弟とはイギリスでの留学時からの長年の友人関係です。
共同創業は珍しいですね。
信頼がおける人と同じ目線で話し合えるのは経営において非常に心強いですし、事業の壁打ちにもなります。また当社のような領域においては、知識量は多い方が良いと考えておりますので、複数人での経営体制を構築しています。
事業の背景や、そもそもマテリアルリサイクルとは何かお聞かせください。
2018年までは、中国や東南アジアが国内外のプラスチックの再資源化と埋め立てを推進しており、日本も廃プラスチックを輸出していました。
しかし、2017年に中国がクリーン国家に転換する方針を掲げ、廃プラスチックを含む廃棄物原料の輸入禁止を発表しました。この流れを私たちはチャンスと捉え、日本国内で廃プラスチックの再資源化を進めていくべく、esaを立ち上げました。
リサイクルにはいくつかの種類がありますが、その中でも、マテリアルリサイクルは使い終わったプラスチックなどを再び原材料として利用し、新しい製品に生まれ変わらせる方法です。元の素材をそのまま活用できる点が特徴で、資源の有効活用と持続可能な環境づくりに大きく貢献します。
一方、日本国内における現状は、プラスチックの約60%がサーマルリサイクルとして焼却されており、熱回収すらできない15%が埋め立てや他国での処理に回されているのが現状です。再生樹脂としてリサイクルされる割合は25%に過ぎず、この課題が企業のサプライチェーン全体での脱炭素社会やESG経営の実現を妨げています。
バイオリサイクルという、微生物の力を使って廃棄物を分解し資源として再生する方法もありますが、プラスチックのバイオリサイクルは技術的に難しく、現時点では限られた実用化にとどまっています。
今まで国内でも、リサイクル自体は行われていたような気がします。
実はプラスチック製品は、何層にも種類の異なるプラスチックが重なっていています。例えばペットボトルは、殺菌効果があるプラスチックが表面の層となっています。その内側の層は耐久性や内容物の保存性を高めるために異なる素材が使われています。さらに、内層は柔軟性を持たせるための別の種類のプラスチックが使用されることが一般的です。これにより、再資源化する際に分解やリサイクルが困難になりがちです。このようなプラスチック製品の多くは、分解や再資源化されることなく、燃焼されたり、あるいは、埋め立てられていました。かつ、日本で作られるプラスチック製品は非常にクオリティが高い一方で再資源化しにくいため、日本は他国に比べて再生樹脂を使うことが遅れています。
最近、日本ではサステナブルを推進する取り組みが増えてきたと感じますが、世界的に見るといかがでしょうか。
再生樹脂を使うことが義務化されている欧米に比べ、日本は遅れているという印象ですが、日本企業は世界トップレベルのプラスチック製品の生成技術を持っています。これは、日本の製造業が長年にわたり精密工学、品質管理、および技術革新に力を入れてきた結果です。特に、家電、自動車、医療機器などで求められる高精度のパーツや製品を支えるために、プラスチックの加工技術が高度に進化してきました。
当社が再生樹脂を生み出し販売できるようになれば、日本でも廃プラスチックの循環ができるようになります。とはいえ、高度な処理技術の獲得やサステナムーブメントは、当社だけで起こせるものではありません。
資本提携でアクセルを踏む
今回、業務提携ではなく資本関係まで結んだ理由を教えてください。
出資いただいた事業会社様は、従前から製品の共同開発を行い、再生樹脂を使用したリサイクル製品が完成していました。
今後マテリアルリサイクルが普及していくためには、一般消費者がリサイクル製品に触れ、認知していくことが必要だと考えています。資本業務提携を通して、事業会社様と更なる製品の開発や販売の拡大に向けて取り組んでいきます。その他事業会社様からも出資をしていただいたことで、より強固に業務を進めることが出来ると考えております。
資本業務提携によるメリットは他にもあるのでしょうか。
マテリアルリサイクルが広がっていくためには、短期から長期までフェーズがあると考えています。そのなかで、現在は消費者が手に触れて認知を獲得していくフェーズと認識しており、まずはesaが生み出す再生樹脂を製品化することに集中しています。
日々多くの大企業様から業務提携のお話をいただきますが、資本業務提携を行うことにより、短期間で集中して出資企業様とプロジェクトに取り組むことができています。
引用:プラスチックリサイクルのesa、シリーズBエクステンションラウンド総額1.2億円、累計総額9.3億円の資金調達。“withプラ”戦略を加速させ、各地域でのリサイクルを可能にするビジネスモデルを展開
今回の調達資金はどのように活用していくのでしょうか。
新しい仲間を迎え入れることで、経営基盤をさらに強化し、一緒に成長していきたいと考えています。弊社は経営陣含めて多国籍で、業務は英語を中心に多言語を使用しております。また、プラスチックやリサイクル技術に関心を持ち、専門性を備えた人材を見つけて採用するのは、なかなか難しいと感じています。
ステークホルダーだけではなく、求職者の方々にも当社をもっと魅力的に感じてもらえるように、研究開発と情報のアップデートを行い、世界で勝負できるように整えていきたいです。
世界に挑むesa
グローバルな展開についてお聞かせください
現時点では、京都大学との産学連携が挙げられます。当社の作成した再生ペレットの物性(プラスチックの物理的性質)を京都大学のチームが研究し、その成果を論文にしています。研究メンバーはオーストラリアで環境の研究をしていて、Ph.D.を保有していることもあり、今後の海外渉外や資金調達、製品導入の際に非常に頼りにしています。
また、当社のメンバーはリサイクル文化が進んでいる台湾やインドネシアから参画しているため、国外からの視点も吸収でき、海外へ展開する土台ができていると自負しています。
今後は、日本よりも再生樹脂開発の利用が進んでいる海外に展開していく方針です。海外企業がこれまで活用していた樹脂よりも、さらに質の高い素材を提供し、日本を代表するマテリアルリサイクルの会社としてプレゼンスを発揮します。
しかし、複合素材の再生樹脂市場は、技術・製品・加工機材など一社だけで創り上げられるわけではありません。研究機関、今回出資いただいた企業にとどまらず、一緒に環境を良くしていきたい方々と手を取り合い、成し遂げていきたいです。
最後に事業会社、投資家の皆様に向けて一言メッセージがあればお願いいたします。
昨今はテクノロジーといってもITやSaaS業界への調達が多く、かつて「技術の日本」と言われていた競争力を取り戻すのに欠かせない、DeepTechへの投資が少ないように感じます。esaを含め、DeepTechにもっと可能性を感じてほしいです。
また、DeepTechのスタートアップは、自社だけで社会課題を解決することは難しいと思うので、様々な企業や投資家と協力しながら社会実装していくことが求められると考えます。
共創の考え方ですね。
現代において「脱プラスチック」は不可能だと思いますが、「Withプラスチック」は実現できると思います。
最近は、靴を含めたアパレルを再生樹脂でつくることが増えてきました。樹脂には様々な色が混ざっていることがあります。そのため、全く同じ色・素材のアパレルは存在しません。今までは、少しでも他の色が混ざっていたり、傷がついていたプラスチック製品は、消費者に受け入れられていませんでした。しかし、少しずつ多様性の観点が広まり、このような製品も良いのではないか、という様な捉え方が浸透しつつあると感じています。
製品だけにとどまらず会社も同様で、多国籍や様々なバックグラウンドの人間が居たほうが、同じような考え方を持った人ばかりの会社よりも、イノベーションを起こすことができ、社会にインパクトを残せると考えています。
esaの生み出すマテリアルを通じて、このムーブメントを社会に広めていき、社会がもっと良くなってほしいと考えています。
Produced by Sourcing Brothers | text by Jinya Nakamura | photographs by Yuji Shimazaki