【Career Vol.7】「産業の真価を、さらに拓く。」世界No.1の東京の価値を向上させるestie
2018年12月に設立した株式会社estie。商業用不動産市場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指し、「estie マーケット調査」をはじめとしたプロダクトは10個を超える。提供する不動産データの情報量や質、その使い易さで業界の発展に寄与している。直近はシリーズBで28億円を海外投資家や政府系ファンドから調達し話題を呼んでいる。今回は進化し続けるestieの環境と投資家から強い評価を受ける理由を深堀した。(写真=株式会社estie 代表取締役 平井 瑛)
estieについて
estieについて教えてください。
estieは、不動産取引に関連するさまざまな情報をデータベース化し、意思決定や取引をスムーズに行えるデータインフラを提供しています。このサービスは国内外問わず、多くの不動産事業者の皆さまに活用していただいています。
不動産取引における課題とは何ですか?
不動産取引には多くの企業や関係者が関わり、紙やPDF、電話といったアナログな手法で情報伝達がされており、それぞれが独自の方法で情報を管理していたため、データがバラバラな状態でした。この結果、情報共有に時間がかかったり、同じオフィスビルに関する情報でも量や内容にばらつきが生じたりして、不動産業務を進めるための意思決定に必要な情報が十分ではありませんでした。
estieはどのように解決していますか?
私たちは、散らばっている情報を集約し、ルールに沿って整理してデータベース化しています。サービス毎に必要な情報をオンラインで提供することにより、リアルタイムで情報共有が可能になり、不動産取引に関連する情報収集や意思決定をスムーズに行えるようになります。
estieを創業した背景を教えてください。
前職の三菱地所では、米国などの海外市場における不動産投資や運用に従事していました。その後、東京を中心とするオフィスビル事業の経験も積み、スタートアップ向けインキュベーション施設の設立・営業にも携わりました。
海外市場での経験はどのように影響したのでしょうか?
アメリカで商業用不動産の投資を行っていた際、遠隔地から投資の意思決定を行うことは難しいと思われがちですが、アメリカの不動産データ基盤は意思決定に必要な情報が豊富です。このため、円滑に投資を行うことができました。この経験から、現地の情報インフラが充実していることにより投資を促進していることに気づきました。これにより、アメリカでは国内外からの資金が集まり、都市や地域への設備投資が盛んに行われていたのです。
それに対して、東京の不動産市場では何が課題だと感じましたか?
一方で、東京は都市別の商業用不動産市場規模、人口、GDPのすべてで世界1位にも関わらず、日本にはアメリカのようなデータベースが存在しませんでした。このことに気づいた私は、海外からの投資が日本に十分に集まっていない原因はここにあると感じ、情報の集約と提供が重要だと考えました。そこで、estieを創業し、データを整え、流通をなめらかにすることを目指しました。
estieについて
複数プロダクトを提供されている理由は何でしょうか
顧客を訪問してヒアリングをすると、共通の課題からその顧客ならではの悩みまで多くの課題が見えてきます。その一つひとつが新たなプロダクトの種となり、そうした課題を解決するために開発を重ねてきました。その結果、現在では非公開のものも含め提供するサービスは10を数えるまでになりました。
平井社長がSaaSを生んでいるのでしょうか
よく「トップダウン型でサービスを生んでいる」と思われがちですが、実際には社員が顧客の課題や既存のSaaSとのシナジーを見つけ、新規プロダクトを発案してくれることがほとんどです。それを基に事業化が進んでいきます。このプロセスでは、誰でも挑戦できるような体制を整えており、意見を出し合いながら新しい事業を生み出しています。
最近リリースされた「estie レジリサーチ」もメンバーから生まれたプロダクトなのでしょうか?
そうですね。アカウントマネージャーという、プロダクト導入をしていただいたお客様の実務における活用支援を担当していた胡田が、複数のお客様からご要望いただいたのがきっかけでした。彼が自ら課題の深耕や仮説立てをし、スモールチームでMVP(試作品)を作ってはユーザーインタビューを重ねて生み出されたプロダクトです。
足元の不動産市場について
直近ではNYの商業用不動産の価格が下がるなど、不安定さを感じるニュースも多かったと思いますが、どうお考えですか?
新型コロナウイルスの流行前と後では、市況に大きな変化がありました。特にマンハッタンの商業用不動産(オフィス)の空室率は、コロナ前は約3%台でしたが、現在は30%以上まで上昇しています。この変化は、直近まで不動産価格が上昇し続けていたことに加え、コロナによるリモートワークの流れが影響していると考えています。一方で、日本の商業用不動産市場は、逆に最高益を更新しており、空室率も4-5%台と改善傾向にあります。日本市場は比較的安定していると感じています。
オフィスだけではない
また我々はオフィスだけではなく、住宅・物流など多岐にわたり事業展開をしており安定性があります。今後は、コロナも明け、インバウンドも増えているホテルや商業施設の領域にも拡張したいと考えております。
シリーズB資金調達について
今回の出資はestieにどのようなインパクトを与えるのでしょうか。
estieのプロダクトが国内外問わず評価されるサービスであり、社会インフラになっていくことを示していると考えております。また、シンガポールの政府系投資会社であるテマセクグループのVertex Growthと、日本の政府系金融機関である日本政策投資銀行(DBJ)から出資を受けたことで公益性の高い事業だと評価していただいていると感じています。
調達したお金でどのような投資を行っていくのでしょうか。
①マルチプロダクト戦略、②M&Aの実施、③AIへの投資の3つです。特に①では一緒に事業を立ち上げていくメンバーが必要不可欠です。estieは人材投資に重きをおいていますのでぜひチャレンジしたい人と一緒に創り上げていきたいです。
求める人材についてもっと詳しくお伺いできますでしょうか。
私は当社のPurpose「産業の真価を、さらに拓く。」に強く共感してくださる方と一緒に事業を進めたいと考えています。投資家からは「estieには起業家レベルの人材が10人以上いる」と評価されており、実際に職種に関わらず事業を生み出す方、提供価値向上のために積極的に営業にいくエンジニア、業界未経験にも関わらずドメインマスターになる方などさまざまな方がいます。その原動力になっているのは、Purposeへの共感や実現へのこだわりだと考えています。
強い想いを持ったメンバーの影響を受けて、新しく入ってきた社員もスキルや考え方を向上させ、自らの強みを生かす形で活躍しています。
また、当社には商社、コンサル、メガベンチャー出身など多様なメンバーがいますし、学歴に関係なく、結果を出して経営陣として活躍する社員もいます。これは、たくさんの刺激を受けられる環境であるからこそ実現できていることです。
都市や地域の経済力は、国の経済力に直結します。東京やその他の都市・地域が改めて世界から選ばれ続けるため、次の100年の社会インフラを共に創ることは、日本経済への貢献にも寄与します。この大きな挑戦に共感してくださる方とぜひ一緒に働きたいです。