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2026.02.26 CVC

ゴム屋が作った電池から、電源不要のIoTへ——オープンイノベーションによって技術がソリューションになった日

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ゴム屋が作った電池から、電源不要のIoTへ——オープンイノベーションによって技術がソリューションになった日画像

藤倉コンポジットが生み出したのは、“水一滴”で発電し、無線を飛ばして異常を知らせる——電池も配線もいらない液体検知センサだ。

老朽化が進むビルやインフラで漏水トラブルが増える一方、現場では「電池交換が回らない」「天井裏や高所に人が行けない」「電源工事が高すぎる」といった運用負荷が導入の壁になっている。そこに対して、置くだけで動き、異常時だけ通知する“電源不要のIoT”は、確かに理想的な答えに見える。

しかし、技術が優れていることと、市場で使われる解決策であることは同義ではない。藤倉コンポジットのセンサは単体として評価されながらも、現場が本当に求める“ソリューション”にはなりきれていなかった。

「ゴム屋が作った電池」から始まった独自の発想が、オープンイノベーションによって、技術をソリューションに変えたその日を取材した。

「物はできた。でもソリューションになっていなかった」藤倉コンポジットの課題

液体検知センサそのものは、早い段階から市場に「面白い」「使えるかもしれない」という手応えを得ていた。水が一滴付着した瞬間に発電し、無線を飛ばす。電池も配線も不要——漏水監視の世界で、運用負荷を根本から変えうる“強い技術”だったことは間違いない。

一方で、藤倉コンポジット側の実感は冷静だった。「物はできた」。しかし、それだけでは事業にならない。中村氏は当時を振り返り、「単体では評価されるが、そのままお客様に提供できる形ではなかった」と語る。

藤倉コンポジット株式会社 執行役員 先進技術戦略室 室長 中村氏

藤倉コンポジットは「技術」を提案する。顧客は「で、これをどう運用すればいいのか」「既存の設備管理の仕事にどう組み込めるのか」を考える。そこに明確な答えが用意できないと、評価はされても、導入には踏み切れない。まさに“技術と市場の間”に横たわるギャップだった。

藤倉コンポジットが欲しかったのは、センサの価値を「検知」から「解決」に変えるパーツだった。単体で完結するプロダクトではなく、現場の運用にまで降りるソリューションとして、初めてスケールする。その視点に立ったとき、同社の課題は技術の性能ではなく、技術を市場に接続する仕組み

– すなわち、オープンイノベーションで埋めるべき“欠けていたピース”だった。

ゴムの配合×電気化学:バッテリーレスの原点は“非常用電池”だった

藤倉コンポジットのバッテリーレス技術は、最初から「漏水監視のIoT」を狙って生まれたわけではない。原点にあったのは、災害時の“非常用電池”-水を入れると発電し、スマートフォンを充電できるマグネシウム空気電池の開発だった。

当時、同社が着目したのは「停電したとき、人が一番困るのは何か」という現場起点の問いだった。電気が消え、電源がない。そんな状況で、連絡手段であるスマホが切れることが致命的になる。そこで「水さえあれば発電できる電池」をつくり、非常時の電源として届けようとした。水を入れた瞬間に反応し、電力を取り出せる -この電池こそが、のちのバッテリーレスセンサの“心臓部”になる発想の源流だ。

ただ、非常用電池としての事業は、思うようには伸びなかった。高橋氏は「開発者として悔しい思いがあった」と率直に語る。それでも、ここで技術を眠らせなかったのが藤倉コンポジットらしさだ。「水で発電するなら、水を検知するセンサになり得るのではないか」。用途を変え、価値の出し方を変える -技術の“転用”ではなく、“再定義”に近い転換だった。

藤倉コンポジット株式会社 先進技術戦略室 次世代技術開発部 部長 高橋氏

このアプローチがユニークなのは、同社のコアである「ゴムの配合技術」だ。高橋氏は「我々は電池の専門ではなかった」と話す。だからこそ、電池メーカーが当然とするセオリーに縛られず、異なるアプローチで電池を設計した。結果として、高い特性を持つものができあがったという。材料を混ぜ合わせ、異素材を組み合わせる -コンポジットの蓄積が、電気化学の領域にまで“飛び地”でつながった瞬間でもある。

非常用電池として生まれ、事業としては一度つまずいた技術が、発想の転換で「電源不要の検知」に姿を変える。藤倉コンポジットのバッテリーレスは、ここで初めて“センサ”としての道を歩み始めた。

藤倉コンポジット株式会社の主要ゴム製品

出会いが生んだ“初速”——テクサーが埋めた2つのピース(通信×見える化)

藤倉コンポジットにとって、バッテリーレスの液体検知センサは「可能性のある技術」だった。しかし、その価値を市場に届けるには、越えなければならない“最後の谷”があった。センサが発した信号を、現場が使える情報に変え、運用に落とし込む -そこが埋まらない限り、技術は“面白いね”で止まってしまう。そんな状況で、テクサーと接点が生まれた。

提携の決め手はシンプルだった。藤倉コンポジットが欠いていたピースを、テクサーがすでに持っていたからだ。ひとつは「通信」。もうひとつは「見える化」-つまり、データを受けて運用につなげる仕組みである。

まず通信のピース。藤倉コンポジットは、センサと送信側のデバイスまでは作り込めていたが、通信距離を伸ばそうとすると電力が必要になり、バッテリーレスの思想とぶつかる。Bluetoothのような近距離通信では、現場実装の自由度が限られる。テクサーが扱うのは、省電力で長距離を飛ばせるLPWA(ZETA)だ。しかも単なる技術紹介ではなく、日本での展開実績を含めて“すでに使える形”で持っていた。この一点で、藤倉コンポジットの技術は「届く範囲」が一気に広がった。

もうひとつが、見える化のピースだ。センサが飛ばした情報は、受け取って初めて価値になる。どの地点で、いつ、何が起きたのか。誰に通知し、どう対応するのか。ここが整っていないと、現場は動けない。テクサーには、建物内のセンサ群を遠隔監視し、データを管理・分析するプラットフォーム「ビルディクス」がある。受信した情報をクラウドに上げ、ダッシュボードで把握し、設定した宛先へ通知する——藤倉コンポジットが「うまくいかなかった」と語る一気通貫の運用部分が、すでにプロダクトとして存在していた。

株式会社テクサーのサービス

この2つがそろった瞬間、技術は“商品”に近づく。「検知できる」から「現場が回る」へ。撰氏が「事業化の道筋が見えたのが一番のキー」と語るのは、まさにこの点だ。センサ単体では説明しきれなかった導入価値が、通信とプラットフォームを得ることで、顧客にとって分かりやすいソリューションになった。すると、社内の意思決定も早い。高橋氏は「そこからはとんとん拍子に進んだ」と振り返る。

もちろん、単に機能が補完されたからだけではない。コミュニケーションを重ねる中で、技術への理解、スピード感、人となりへの共感が積み上がっていったという。だが、初速を生んだ起点は明確だ。“欠けていたものが、相手の手元に完成品としてあった”。この出会いによって、藤倉コンポジットの技術は、ようやく市場ニーズと接続される準備が整ったのである。

藤倉コンポジット株式会社 経営企画室 撰氏

業務提携を「資本」にした理由:共創のスピードと“競争のパートナー”

今回の取り組みは、いわゆる「共同開発して販売する」という業務提携の枠組みでも成立し得た。実際、高橋氏も「通常の業務提携でも十分いけた」と口にしている。それでも藤倉コンポジットが選んだのは、業務提携にとどまらず資本提携 -つまり、テクサーへの出資という形だった。

背景にあるのは、単なる補完関係ではなく、「一緒に事業をつくっていく」覚悟を最初から揃えたかった、という意思だ。藤倉コンポジット側が直面していたのは、センサという“技術”を市場で回る“運用”に変える局面だった。ここでは、仕様を合わせるだけでは足りない。誰の顧客課題を、どの順番で、どの形で解くのか。どこまでをプロダクトに埋め込み、どこからを運用設計で支えるのか。要は「事業化の意思決定」を連続して積み重ねる必要がある。だからこそ、両社が同じ方向を向き、優先順位を揃え、スピードを落とさず走れる関係性が求められた。

その点で、藤倉コンポジットが強く評価したのが、テクサーの初速と実装力だった。高橋氏は、コミュニケーションを重ねる中で「技術的なところへの共感」「代表の人となり」だけでなく、「スピード感も含めて」共創のイメージがドンピシャで描けた、と語る。製造業側から見ると、スタートアップの意思決定と実行の速さは、ときに武器になる。ただし、それが自社のリズムと噛み合わなければ空回りする。今回、そこが噛み合ったからこそ、資本という形で関係を固定し、共同の意思決定を“当たり前”にしたかった。

実務的に見ても、資本関係はスピードを加速させる。藤倉コンポジットが求めていたのは、技術の完成ではなく、事業としての立ち上がりとスケールだ。そこに必要だったのは、契約の柔軟性よりも、共創の速度を落とさない関係性だった。

次の一手:広域通信、全国展開、そしてBtoC・海外

漏水監視の文脈で「電源不要」という価値が刺さることは、展示会での反響や実証の引き合いが示し始めている。だが両社が見ているのは、単発の製品拡販にとどまらない。次に狙うのは、“広域×多数”を前提にした運用モデルをつくり、社会インフラ級の規模へ押し上げることだ。

まず足元では、案件化のフェーズに入っている。スマートビルディングエキスポでの来場者は、デベロッパーや不動産など“ビルを運用する側”が中心だった。藤倉コンポジットは、そこで得た引き合いを「どう案件化するか」に注力しているという。加えて、実証が進んでいる領域として挙がるのが病院や駅だ。いずれも漏水・雨漏りが発生し得るうえ、設備の制約が多く「人が行けない/行きづらい」場所が多い。センサを置きたい場所ほど運用が難しい、という矛盾を抱える現場でこそ、バッテリーレスの価値は強く出る。

両社が共同出展を実施したスマートビルディングエキスポ

さらに、インフラ領域への展開も視野に入る。アンダーパスのように冠水すると重大事故につながるポイントでは、検知と通知が“人命に直結する初動”になり得る。一方で、電源工事にコストがかかりすぎるため、対策が進まないケースも多い。置くだけで回る仕組みは、こうした「リスクは大きいのに投資が通りづらい領域」に解を出せる可能性がある。

市場の広がりは、BtoBの中だけに閉じない。テクサー代表の朱氏が強調するのは、バッテリーレスが持つ用途の拡張性だ。今はビルの漏水という分かりやすい課題でビジネスモデルをつくり、勝ち筋を磨く。そのうえで将来的に視野に入るのが、介護・ヘルスケアなどの**BtoC(あるいはBtoBtoC)**領域である。象徴的なのが「おむつ」の話だ。水分(排尿)を検知し、通知できる仕組みが消耗品として回り始めれば、利用頻度も市場規模も一気に変わる。もちろんToC向けは製品開発・品質・コスト最適化などの壁が高く、いきなり踏み込むのは難しい。だからこそ両社は、まずBtoBで運用の型を固める戦略を取る。

病院・駅・インフラでの実証を積み上げ、広域通信でスケールの前提を変え、BtoCや海外で用途と市場を拡張する。両社が描く「次の一手」は、漏水監視の枠を越えた先にある。バッテリーレス技術を“単発の製品”ではなく、社会に埋め込まれるインフラ型のソリューションへ——そのための加速フェーズが、まさにこれから始まろうとしている。

株式会社テクサー 代表取締役CEO 朱氏

さいごに

藤倉コンポジットが手にしていたのは、確かに強い技術だった。水一滴で発電し、無線を飛ばす——電池も配線もいらないという発想は、漏水監視の現場が抱える「電池交換が回らない」「人が行けない」「電源工事が高い」といった運用の壁を、根本から外しうる。しかし、技術はそれだけでは市場に届かない。検知できることと、現場が回ることの間には、通信、見える化、通知、運用設計が必要だった。

テクサーとの出会いは、その欠けていたピースを埋めた。省電力・長距離の通信と、データを受けて運用に落とすプラットフォーム。両者が重なったことで、藤倉コンポジットの技術は事業化の道筋が具体的に見えた。

次に狙うのは、さらに広い範囲へ、さらに多くの現場へ。病院や駅、インフラ領域で実証を積み上げながら、広域通信で“多数・広域監視”を現実にし、いずれはBtoCや海外まで用途と市場を拡張する。

ゴム屋が作った電池から、電源不要のIoTへ。オープンイノベーションは、眠っていた技術に市場の出口を与えた。そして今、その技術は“使われる解決策”として、現場の当たり前を変えようとしている。

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中村氏 高橋氏 撰氏  
藤倉コンポジット株式会社
各種工業用ゴム部品の他、空圧制御機器、除振台およびその周辺機器、電気・電子機器、救難救命具等産業資材、ゴルフ用カーボンシャフトの製造販売等様々な分野で幅広く事業を展開
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朱氏  
株式会社テクサー
独自のセンサ技術,特定応用分野向きプロセッサ(ASIP)技術,そしてネットワーク技術を最大限に活かし,IoT技術を利用して,インバウンド観光客への多言語での情報提供サービスや,医療やヘルスケアを高度化するービスなどの分野で,「人と人」「人とモノ」「モノとモノ」とのネットワークを構築.人々に利便性を提供すると同時に,社会にも高い価値をもたらす斬新なビジネススタイルを確立
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