株式会社ウェルモは、「人ありき」のテクノロジーで、一人ひとりが輝く社会を実現することをパーパスに掲げ、介護業界向けの革新的な業務DXソリューションを提供しています。25,600事業所のユーザーを抱える在宅介護の地域資源情報を集約するプラットフォーム「ミルモネット」「ミルモブック」や介護業界に特化したコーポレートサイト制作・管理システム「ミルモネットプラス」ケアプラン作成支援AI「ミルモプラン」、などを展開し、介護現場の課題解決に貢献されております。
直近では、約9年にわたる介護事務作業の調査と経験を元に開発した業務自動化の新ソリューションをリリースされる等、介護業界で一番勢いのあるウェルモCEOの鹿野様にお話を伺いました。
介護業界における人手不足は国家課題
鹿野様の経歴を教えてください。
株式会社ウェルモを創業したのは2013年4月になりますが、それ以前は新卒で株式会社ワークスアプリケーションズという企業で働いていました。ワークスアプリケーションズでは主にERPの導入コンサルティングを行っていました。
専門の領域が人事でしたので、いわゆる人事給与の基幹システムを上場企業に導入していくといった業務です。1つあたりのプロジェクトに携わる期間が比較的長く数ヶ月では終わらないため、基本的には年単位で行われていました。システムを移行するにあたって、どのような課題が出てくるのか調査しながら課題を洗い出していき、最終的に様々な機能を駆使しながら業務改善を目指し既存システムから移行していきます。
いろいろなプロジェクトに携わりながら感じたのが、介護業界は離職率が非常に高く、人事面で課題が多い領域だということです。日本という国がこれからどんどん高齢化するにあたって、介護の負担は重くなります。そのため、介護業界の人手不足という問題は国家課題であり、なんとかしなければならないと感じました。
起業された理由について教えてください。
インターンシップの経験を通じて、もともと目指していた世界は自分の性格を考えた際に文化が合わないと感じたからです。
私の家系は、サラリーマンとして長く働いている人がいません。父親も母親も独立しており、祖父も起業しています。私は親が会社から独立してバブル崩壊等の局面で苦労している姿を見て「起業はしないぞ」と考えていました。だからこそ、就職活動をしていた当初は金融機関で堅い人生を歩もうと考えていたのです。実際に6社内定をいただいたなかで、金融機関が5社を占めていました。
しかし、投資銀行やファンド等へインターンシップに行った際、社風の堅さを感じました。金融機関の場合、基本的にはトップダウンの環境です。私のように起業している人が多い家で育つと、考え方において少なからず影響を受ける部分があります。そのため、上から指示されたことをやるといった会社では文化が合わないと感じたため、IT企業へ就職し起業することにしました。
起業時に苦労したことを教えてください。
1つのプロジェクトにおいて、マネタイズにいたるまでにかかる時間の長さです。たとえばゲームのアプリなどであれば、内容次第では半年〜1年の準備期間でリリースできてしまいます。ですが、ヘルスケア市場においては世の中にサービスを出すために5年、7年と平気でかかります。
一般的なベンチャー起業であれば、短期でグロースして一気に成長していくイメージを持たれるかもしれませんが、ヘルスケア市場ではそうもいきません。どちらかというと、実証して精度を上げて、現場での課題を拾いながら時間をかけて介護保険法等の制度の状況を見ながらリリースしていくイメージです。
すぐにわかりやすく成果が出るようなものではないので、サービスをリリースするにあたって、社員のモチベーションのコントロールが難しく感じました。
日本の介護業界における課題を改善する5つのサービス
ウェルモの事業や注力している領域について教えてください。
現在ウェルモが展開しているプロダクトは、大きく分けて5つあります。
1つ目が「ミルモネット」という、事業所の介護サービスプラットフォームです。ウェルモのなかでも一番歴史が古いサービスで、9年ほど経っています。お客様は約25,900事業所あり、自治体でいうと460以上カバーしており、いわゆる「介護業界の食べログ」のようなイメージです。
2つ目は「ミルモネットプラス」という、介護業界の採用支援に特化したホームページ制作を行う事業です。介護業界においては、小規模な事業所だとホームページがきちんとつくられていない場合も数多くあります。また、ホームページがあっても整理されていなければ、求職者は食事の料金やリハビリの種類など事業所に関する必要な情報を得られません。
介護業界の場合は人数が少ない事業所だと、5〜6人程度で業務を行っているケースがあります。ウェルモでは人数が少ない企業でも、ミルモネットとデータ連携することでコーポレートサイトの管理が簡便に行えるようサービスを提供しています。
3つ目が「ミルモオートメーション」という、介護業界における現場の業務をEPAで自動化させるサービスです。介護業界においては事務作業が非常に多く、自治体に届け出る書類も多数あります。煩雑な事務作業は非常に時間がかかるため、これらを自動化することで8、9割の業務圧縮を行い本来の介護業務に充てられます。
現時点でリリースしているサービスは、大きく分けてこの3つです。
他にはどのようなサービスを展開されているのでしょうか?
残り2つのサービスは研究開発中ですが最終フェーズにあり、1年以内のリリースに向けて動いています。
1つ目は「ミルモプラン」という、ケアプランの作成業務を効率化できるサービスです。たとえば、脳梗塞の方で麻痺がある場合、どのような介護が必要なのかといったケアプランをAIが作成します。このケアプランをつくるにあたって、担当している患者様の人数分作成しようとすると、莫大な時間がかかります。ケアプランはある程度フォーマットが固まっているため、作成および処理作業をAIが支援することで、業務効率の改善につなげられるのです。
ミルモプランに関しては研究開発が進み、一部の機能がリリースできました。今後は機能拡充を図り、さまざまな事業所と連携しながら、仕組みを整えていく予定です。
2つ目は「ミルモリズム」という、独居の高齢者を対象にしたモニタリングサービスの研究開発を進めています。高齢者のなかには、メールやLINEなど連絡手段を使わない方もいます。そのため、遠くに住んでいる家族からすると、どのように過ごしているのかわからず不安だと感じることでしょう。最近では人手不足の影響もあり、民生委員の方が高齢者の住んでいる家をまわり、様子を確認することが難しくなってきました。
この問題に対してウェルモでは、東京電力パワーグリッド株式会社と協業してサービスの提供準備を進めています。具体的には、電力の利用状況を分析して何時に家電が動いているか確認したうえで、行動推定し1日の生活リズムを推測するというものです。ミルモリズムが実装されれば、カメラを使用せずプライバシーに配慮しながら、住んでいる方の見守りが可能です。
今後も介護領域を軸として、さまざまなサービスを展開されていくのでしょうか?
これまでは、人手不足とはいえ介護就労者の方が増え続けている状況であったため、なんとか人を採用できていました。しかし、統計的に見ると2023年に状況が反転し、介護就労者の人口が約1.6万人減少しています。
もともと厚生労働省では、2040年までの推計として介護業界で約69万人が不足するという計算をしていました。ですが、この数字はあくまで介護就労者が増加したうえでの計算です。そのため、2023年時点で介護就労者が減少している今となっては、さらに人手不足が進んでいることになります。ウェルモでは、介護業界におけるこれらの課題に向き合い、改善すべくサービスを展開しています。
国民全体の幸福度を上げる際に介護業界から学ぶことは多い
働くうえで、介護業界に携わる魅力を教えてください。
介護業界に携わる魅力は、人間らしさを感じられることです。今のご時世では、ITの進化によって対面文化が減少しています。私も含めて、今の20〜30代の方と80〜90代の方では、人との向き合い方や距離感がまったく違うと感じています。やはり高齢の方はドライではなく、人間らしい付き合い方をされる方が非常に多いです。具体的には、かかわる方への感謝や感情を大事にしている印象です。
近年ではコストパフォーマンスという言葉が広がっている一方で、介護においては真逆だと感じています。人間らしい振る舞いというのはコストがかかるため、正直なところ生産性は悪いと言えるでしょう。しかし、介護の良さはこの人間らしさの部分だと考えています。人は、孤独では生きられません。なぜなら、孤独と幸福は密接にリンクしており、孤独感は幸福度を下げるからです。
介護の領域は人ありきですので、人が人を最後までしっかりケアして、家族並みに寄り添っていくことを大事にしています。コストや時間よりも人の命や感情に重きを置いているため、一般のビジネスと比べて介護業界は人間味を取り戻せるように感じる点が、働くうえでの魅力と言えるのではないでしょうか。
人と人の関わり合いで気がつくことがあったのでしょうか。
介護の業界に携わっていると、良い意味で「このような人がいるのか」と感動することがあります。私はこの業界や介護技術が好きというよりかは、介護業界で働いている方が好きです。
しかし、介護業界においてはこれらの素晴らしい方々が頑張っているにもかかわらず、給料や社会的地位は低いのが現状です。私はこの状況に納得できませんし、介護業界で働いている方は、現状よりも社会的に評価されるべきだと考えています。
介護業界は人間らしさという意味で良さが保存されており、非常に価値がある環境だと考えています。国民全体の幸福度をもう少し上げるという話があった際に、介護業界から学ぶことは非常に多いです。そのためにも、ウェルモのサービスを通じて支援していくことで、介護業界に興味を持つ方が増やせるようにしたいと考えています。
コストパフォーマンスを重視する風潮はどのような未来を描くのでしょうか。
昨今では、コストパフォーマンスが高くスケールしやすいモデルに目がいきがちです。仮に国民全員がコストパフォーマンスを意識しだした場合になにが起きるかというと、介護を誰も行わなくなります。そのような未来を迎えたときに、日本はすでに高齢化社会を迎えているなかで、国として成り立っていくのでしょうか。
もちろん事業を行うにあたって生産性は重要ですが、介護のような社会性のある分野でもしっかりとお金を稼げるようにする必要があると考えています。そのために、ウェルモではITを駆使して介護業界の支援を行っています。ITの実装により生産性を高めていくことで、介護に携わる方の平均年収や社会的地位が、他の業界と比べても差が埋まっていくようにしたいです。
業界や法律を変えていくような仕事のダイナミックさが魅力
ウェルモで働くにはどのような方が向いているのでしょうか?
ウェルモの環境に適しているのは、ヘルスケア領域に関心があり、IT系のバックグラウンドがある方です。価値観においては、ドライに話すというよりは人と話すことが好きな人の方が向いています。ウェルモに限らず言えるかもしれませんが、業界全体として人間味のある方が非常に多いため、しっかり人と向き合いたいと考える人が向いています。
とはいえベンチャー企業でもあるため、数値への意識が必要でありバランス感覚も重要です。また、1人ひとりの業務における裁量が大きいため、自立自走型の人がより適しています。
ウェルモならではの制度や仕組みがあれば教えてください。
拠点が札幌・東京・大阪・福岡と4つあるため、全エリアをWeb上でつなぎ会話する機会をつくるようにしています。各事業部からの発表をシェアしたり、1対1で話したりすることで、社内の人と人がつながる機会を増やすのが目的です。
他には、家賃補助が充実しています。エリアによって差はありますが、とくに東京と大阪のような家賃相場が高いエリアは補助を厚くしています。遠くから通勤時間をかけて通うよりかは、会社の近隣区で腰を落ち着けて頑張ってほしいという想いがあるからです。
あとは、人と人のつながりを意識していることもあり、みんなで顔を合わせるイベントが多くあります。会話をすべてリモートで済ませるのではなく、たまに集まってみんなでご飯を食べに行くイメージです。また、新しく社員の方が入社した際は、必ずウェルカムランチを行います。今の世の中としては少し古いかもしれませんが、介護業界は人を大事にする部分もあるため、このあたりは今の時代としてはユニークな取り組みと言えるのではないでしょうか。
その他に、整えている制度などはありますか?
人事考課の仕組みに関しても、整備されています。ウェルモでは半期に1回上長とすり合わせを行うのですが、その際の評価項目が明確になっています。ですので、評価項目に合わせて公平公正な評価を適切にやっていくイメージです。会社として求めている内容を明確にしているため、評価体系がクリアであると言えます。
あとは、ウェルモの場合は職種ごとにグレードがわかれているため、キャリアプランニングもきちんとできる点が特徴です。
最後に、入社を検討されている方に対してメッセージがあればお願いします。
ウェルモで働く良さとしてあるのが、国策レベルで物事を考えて事業展開が行われるような視座を高める環境があることです。実際に、国への政策提言を行ったうえで実装していくような、業務のダイナミックさは他の会社にない魅力です。ですので、ウェルモで行う業務はサービスをただ売っていくだけの仕事ではありません。本当に国としてどうあるべきなのかや、どのようなシステムを普及させるべきなのか政策に落とし込んで実行できることが、ウェルモで働く際の魅力だと考えています。
ウェルモはケアテック協会側の立場でいろいろな企業からの意見を吸い上げて、介護保険法のデジタル化についてこうすべきだという提言書をまとめています。実際に2024年の改定においては11項目を提言したなかで、7項目が実現しました。このような業界や法律を変えていくような仕事のダイナミックさは他の会社にない魅力です。そこに付随して、プロダクト戦略や営業戦略をつくり貢献するものに仕上げる点では、一気通貫で支援が出来ます。
あとは介護業界において、やれないことがほぼないぐらいいろいろなネットワークがあります。そのため、他の会社よりも多くの選択肢を提供できるはずです。日本という国に直接貢献できるIT系の会社は少ないと思いますので、これらの環境を魅力的に感じていただける方に、ぜひ応募していただけると嬉しいです。