【Career Vol.3】「その使命が建設業の未来をつくる」株式会社BALLAS 代表取締役 木村 将之 インタビュー


建設部材の最適な調達を実現するBALLAS。
同社の創業者であり代表取締役の木村将之氏に起業ストーリーやこれからのビジョンを聞いた。
建設業全体の最適化を目指し起業
木村様の経歴について教えてください。
2014年に双日株式会社へ入社し、鉄鋼事業部という鉄製品を扱う部署に配属されたのがキャリアの始まりです。
鉄鋼商社の主管業務や、カーボン製品を取り扱う事業会社で、輸出入や事業投資に従事しました。その後、金属3Dプリンター事業に携わり、ドイツへの赴任も経験しました。
双日に7年間勤務した後、株式会社Catallaxyというスタートアップ企業に転職しています。Catallaxyは、ものづくり業界向けの受発注プラットフォームを提供している会社です。経営企画責任者として1年間従事した後、BALLASの創業に至っています。
起業を意識されたのは、どのタイミングでしたか?
事業の着想は双日時代からありましたが、最終的に起業を決断したのは、会社を立ち上げる直前です。
双日での経験からものづくり業界の課題の深さを感じており、業界課題の解決にテクノロジードリブンでアプローチすべく、Catallaxyに参画しました。
一方、Catallaxyでは、同じものづくりでも製造業と建設業とでは根源的な課題が異なることを痛感し、起業に至っています(Catallaxyの大石社長が寛大な心の持ち主で感謝しております)。
創業時に意識していたことを教えてください。
創業時から意識し続けているのは、顧客への価値提供を最大化するために、役職員それぞれが一人の力以上の価値が発揮できる会社の文化づくりです。
有難いことに、BALLASへは非常に優秀な方々に入社いただいており、メンバーそれぞれが使命感をもっています。
無駄なしがらみや社内政治、忖度などは一切排除して、その想いや力を存分に発揮できる組織・文化を目指しています。

調達領域から建設業の生産性改善へ
会社の事業および、現在注力されている領域について教えてください。
国内の建設投資額は年60兆円規模であり、その内の約35兆円を調達領域が占めています。インパクトの大きな調達領域の「最適化」から事業を展開し、建設サプライチェーン全体に寄与していきたいと考えています。
現在のBALLASでは、建物の一部に使われる建設部材を最適なサプライチェーンで提供し、この領域で働く方々の生産性を改善しています。具体的には、建設部材の調達プラットフォーム「BALLAS」での部材調達を通じて、建設工事会社とパートナー工場の取引コスト削減や、納期の大幅な短縮を実現しています。
従来の調達領域においては、「図面バラシ」という設計工程が、建設工事会社と製作工場の取引のボトルネックになっていました。両者間では、業務に必要な図面そのものや必要な知見が異なるため、認識のズレや修正依頼が頻繁に発生していたからです。
BALLASの場合は、建設工事会社は「BALLAS」を利用することによって、ボタン1つで煩雑な調達業務が完了します。さらに、図面や仕様要件のデータをクラウドで管理できるため、類似部材や過去案件の情報管理が簡単に行えます。
結果的に、建設工事会社は、調達したい部材の図面作成から部材供給までを効率よく、一貫してBALLASに任せて、施工に集中できる点がメリットです。一方、パートナー工場はBALLASに製作図の作成や見積もり交渉などを任せて、製作に集中できます。
BALLASを利用することで、建設工事会社とパートナー工場両方の取引コストが削減できるのですね。
創業前は「図面バラシ」の効率化が、業界に与えるインパクトで一番大きいと考えていました。それ自体は間違っていないのですが、建設現場では一連の繋がった生産プロセスの中で、粒度の異なる事象が複数起こるため、いち工程である図面バラシだけを効率化しても全てがうまくいく訳ではありません。各工程におけるデータを図面に紐づけて、部材の製作から施工までの「チェーン」をスムーズにする必要があります。
BALLASの利用により調達業務の負担が減る上に、データを使って標準化し続けることで、取引する度に最適化を図るサイクルが生まれています。

建設業を最適化し、人々を幸せにする
ミッションに対する想いを教えてください。
ミッションとして選んだ言葉には、大きく2つの意味合いがあります。1つ目は、「生産性」、2つ目は「創造性」です。
「生産性」で言うと、BALLASを通じた最適なサプライチェーンの構築です。
最適な生産プロセスを通じて、必要な建設部材を早くお届けすることで、コスト・納期の面で貢献するということです。他の業種と比較しても課題の深い人手不足や高齢化に対するソリューションであると考えています。
一方、建設業の本質は「創造性」にあると考えています。業界で働く人々はもちろんのこと、建設物を利用する人々の安心・安全が確保された上で、より豊かに、幸せに暮らせる社会基盤をつくることを意味しています。
生産性を改善しながら、創造性を磨く仕組みをつくること。また、建設業に関わる人々だけではなく、建設物を利用する一般の人々もより幸せが享受できる社会をつくるという想いが込められています。
人材不足が叫ばれる建設業界ならではの課題と魅力
建設業界および、建設部材の調達領域における課題を教えてください。
大きな業界課題の一つが高度技術を有する職人さんの不足です。
2024年問題とあるように、働き方改革関連法の適用や超高齢化社会によって現段階で課題が顕在化しているだけでなく、10年後にはより深刻化する外部環境に陥っています。
その上で、業界構造における課題は、各工程の業務がサイロ化、分断していることで取引におけるコミュニケーションに甚大な労力が掛かっていることです。
例えば、調達領域では、建設工事会社が作成・利用する施工図面と、製作工場が部材を作るのに必要な製作図面があり、それぞれの図面が持つ情報が異なります。これまでは情報連携に多少の不足があっても、職人さんが高度な技術でカバーして下さっていたのですが、それでは成立しない状況が出てきています。

少子高齢化に関しては、日本全体の課題と言えますよね。
建設業界の場合、他の業界で行われている解決策を一律に当てはめられない難しさがあります。
例えば、外国人実習生を受け入れるなどの施策は、人材ボリュームという意味では解決策の1つです。しかし、長い歴史の中で培われた職人技を一朝一夕には身に着けられず、人数だけ補填すれば解決する訳ではありません。そのため、建設業界は根本的に仕組みを変えなければいけない「時代の転換点」にきています。
建設業界および建設部材の調達領域における、業界ならではのやりがいや魅力を教えてください。
完成物としてリアルにモノが出来上がるため、仕事の成果をわかりやすく実感できるのは魅力の一つだと思います。特にBALLASの事業は、ソフトウェアだけでなく、部材製作・納品を行うメーカーの一面があるため、より実感しやすいと思います。巨大な市場ではあるものの、一つ一つの業務が業界をより良くすることに繋がる実感が沸くのは建設業界ならではですね。
働きやすい環境を整えるための制度や取り組み
職場環境において、BALLASが整えている制度や仕組みを教えてください。
それぞれが働きやすい環境を整備するという点で、勤務方法をオフラインとオンラインのどちらでも選べるハイブリッド形式を採用しています。また、コアタイムはあるもののフレックスタイムでの働き方が可能です。
個々人が働きやすい環境というのは画一化できないものと考えています。会社としては、チームの連動性は担保しながらも、働き方の選択肢があることで、それぞれが成果が出しやすい環境を整えたいという意図があります。
他社のスタートアップ企業と比較した際に、職場環境における違いや魅力があれば教えてください。
現在、東京と大阪の2拠点を展開していますが、拠点ごとに情報の格差が出ないような環境を整えている点は、会社として意識しています。
BALLASの事業は、日本全国に、また日本以外でも納品場所となる建設現場があるため、創業当初から複数拠点展開を想定した組織作りをしています。
具体的には、以下の3つが文化として根付いています。
- Slackをベースのコミュニケーションツールとして同期・非同期で連携
- 情報統制ルールを敷いた上で会議の議事録や録画をオープンにする
- ナレッジやフローなどをドキュメントとして資産化する
特に3点目のアウトプット文化は、資産として活用するだけでなく、意見出しや共通の認識が持ちやすくなり、リアル x テクノロジーで事業推進する礎になっています。

「他責にしないは100%」
現在BALLASでは、どのような方が働かれているのでしょうか?
年齢層で言うと、平均年齢は32歳前後、幅としては20代前半から40代半ばの方まで広くいます。男女比は男性が7割で、女性は3割ほどです。経歴は、建設業で働いていた方を含めて、商社や製造メーカーなど、ものづくり産業にかかわっていた方が多いです。
但し、社内ではユーザーに関係のない表面的な属性は重要ではなく、直接・間接いずれでも、ユーザーに対して発揮する価値に重きを置いています。その上でBALLASに入社される方で共通項のパターンを挙げると大きく以下の2つに分けられます。
- ものづくり業界や建設業界が好きでより良くしたいと考えている方
- BALLASのアプローチに共感し、世の中に対して貢献したいと考えている方
より抽象化すると、みなさん建設業界や社会への貢献といった使命感を強くもっており、BALLASの企業理念に真っ直ぐに向かっています。
価値観や考え方という点で、働いている方の傾向はありますか?
少し重複しますが、ゴールに対して、真っ直ぐに取り組もうとしている人が多いです。
全社的にも、ゴールから逆算した仮説プロセスを軸に解像度・行動量を上げていくことが重要だという共通認識を持っています。個人として、組織として、大きな成果を出すこと、ひいては自分達も含めて人々がより幸せになるために必要な基本動作だと考えています。
BALLASで働くにあたって、どのような方が向いているのでしょうか?
基本姿勢として、自然に利他的でいられる方が向いています。
BALLASでは「他責にしないは100%」という言葉を掲げて、自らブレーキを掛けてしまわない仕組みづくりを進めていますが、そもそも利他的な素養を持っている方にご入社いただくことが前提です。
最後に、入社を検討されている方に対してメッセージがあればお願いします。
BALLASという会社は、ダイナミックさと緻密さの二面性があると捉えています。
建設業界という大きな市場で、家や建物を利用する方までを含めると全人類に影響があると言えます。
そのため、BALLASがアプローチする「建設業の最適化」は、社会全体へ貢献するという点でダイナミックな動きです。
一方で、日々の業務においては、緻密な仮説検証を通して一つ一つ物事を前に進めています。非連続な成長を描く方針・戦略はあれど、それを持続的に実現し続けるには緻密な取り組みが必要で、飛び道具はあり得ません。
この二面性を楽しみながら人生を謳歌できる方と一緒に、大切な時間を共有できることを楽しみにしています。
