【前半】国内No.1 ビジネスチャットを持つ株式会社kubellが運営するkubell BPaaSファンドが目指すオープンイノベーションを深堀はこちら
CVC運営は大企業だけが行うものではない
グロース企業こそCVC活動をしやすい—
CVC活動は大企業がやるものと想起しがちだと思いますし、資金的なアドバンテージがあるのは確かですが、事業規模が小さい方が社内の連携が取りやすい、意思決定が早く円滑に進みやすいなどのメリットがあり、イノベーションが起こしやすいのではないかと私は考えています。また売上規模が大きすぎるとスタートアップと連携してもインパクトは少ないように思えます。それであれば既存事業で売上を上げていくほうが効率が良いと思います。
一方で多くの企業はマンパワーが足りないような気がします。
CVCを組成するにあたって組織化を意識することが重要です。どこの部署と誰がどのように連携をとるのか。緻密な戦略を予め考えることが必要だと思います。
BPaaSファンドは何人で運営しているのでしょうか。
今も前職のCVC時代も一人で運営していました。投資先は30社ほどでした。実際、多くの運営人数は必要ないと思います。ネットワークなどの属人的な要素がありますので人手を増やせばいいというわけではないです。もし手軽に始めたいのであれば経験者を採用することが一番早いということもあります。
事業部とのかかわり方
連携を考えたときに既存事業部とイノベーション部は近い関係で遂行すると思いますが、部署を切り分けたりしているのでしょうか。
部署は完全にきりわけた方が良いと考えます。所属している部署で片手間で運営してもサービス説明や販売に身が入らないと思います。自分たちの本業の目標を優先すると、アライアンス先の商品はなかなか売れません。我々は連携サービスの販売に専念する部署を新設しています。
「Chatwork」のセールス部門から異動ということでしょうか。
ケイパビリティが異なることも多いため、適性のあるメンバーに限定して異動してもらうこともありますが、中途で獲得していくことがほとんどです。BizDev部署も同様ですがケイパビリティがマッチする方をアサイン・採用します。
評価制度も分けているのでしょうか。
部署をわけているので同様に分けています。また最近ではBPaaS事業については子会社であるkubellパートナーを新設し評価も明確にわけるようにしています。
スタートアップとの関わり方
事業部署においてどのような提携先への付き合い方をしているのでしょうか。
投資しているか否かに関わらず、kubellにとって利益が最大化することを前提に販売しています。大軸をブラさなければ投資検討も事業部も迷いがないと考えます。出資しているところであれば売上フィーを獲得しつつ、バリューアップにもつながるという考えです。
M&Aに変わっていくことはありますか。
最初はマイノリティ出資で始まり、ゆくゆく当社にグループインしていただくという考え方はあると思います。ただしM&Aとなると、相手の会社の状況などもあり、出資とは異なるハードルや難しさも出てくると思います。
例えば出資先の会社において、マーケティングがうまくいっておらず立ち行かないということがあったとして、すぐにM&Aという選択肢を取るというよりも、当社のナレッジをつかって一緒にマーケティングを組み立てていくというのも選択肢だと思っています。
投資検討をする上で、独占契約等のサイドレターを締結しているのでしょうか
当社はエクスクルーシブな契約は締結しません。
もし記載する場合でも「同業他社と協業する可能性もあります」や、「自社で立ち上げる可能性もある」とオープンにしています。これは逆に了承いただけるスタートアップにしか出資はしません。したがって先方が競合のビジネスチャットを使いたいというときに禁止することもありません。
また、あくまで本体はCVCではなくkubellなので、kubellの事業部が投資先と同じ事業内容はやりませんとなると、投資先や内部でハレーションを起こす可能性があります。つまり出資すればするほど自社独自の事業開発ができなくなります。これは会社にとっての大きな機会損失にもなりえますし、避けるべきだと考えています。
バリュエーションについて
kubellの場合は資本業務提携にてクロスセル販売を行うことが多いですが、バリュエーションにアップセルを踏まえて計算するのでしょうか
適切な判断ができなくなるのでアップセルは考慮していません。加えて、リード出資は行いません。リード投資家に合わせる形で入っています。
LP出資との分け方
マネーフォーワードのファンド、HIRAC FUNDに出資されていますね。
LP出資はスタートアップの情報収集と財務リターンを考えて投資を行っています。
LP出資ではSU連携の経験値を得るために行うとも言われますがいかがお考えでしょうか。
CVC活動の初期段階として、スタートアップコミュニティへのリーチやスタートアップとの関わり方を学習するためには有効だと考えます。ただし再現性の高いシナジー創出、イノベーション実現を期待するのであれば独自にCVCを設立することが必要です。
produced by Sourcing Brothers | text and edited by Jinya Nakamura | photographs by Yuji Shimazaki